テレビパブリシティの成功は、単なる「運」や「コネクション」では無しえません。
長年にわたってテレビ番組へのパブリシティを専門に手がけてきた経験から言えること。それは、放送に結びつく提案には明確な「意識」が存在するということです。
情報番組・バラエティ・報道・生活情報と、ジャンルを問わずテレビ制作者が反応する提案には共通する要素があり、もちろん番組の特性に応じてバリエーションが必要なものの、制作者の視点で「使いたい」と思わせる提案を構築するポイントがあります。
詳細ではもっと論じる点はあるのですが、5項目で整理しました。自社のPR資料づくり、提案のきっかけとして、且つ私たちも日ごろの活動に自戒を込めて…
企画の考え方|「視聴者の代理人」として発想する
テレビ制作者が最も気にしているのは、
●「視聴者がこれを見たいか」
●「今取り上げるべき理由」
だからこそ、PRパーソンが企画を立てる際に犯しがちな最大の過ちは、「企業や団体が伝えたいこと」を起点にしてしまうこと。
制作者の視点で重要なのは、「なぜ今、この話題が世の中で必要とされているのか」という社会的文脈との接点。
流行・季節・社会問題・統計データ・世代間のギャップなど、旬のフックを見つけ、そこに対象案件の情報を自然に着地させる思考が不可欠です。どんなに優れたサービスや成功の実績があっても、それは「素材」であって、企画の主語は、あくまで「注目されるべき現象」のほう。
さらに、「視聴率を取れる時間帯・番組ジャンルはどこか」まで想定した上で企画を設計できると、制作者との会話が一気に具体化します。
私たちは、あくまで「提案・起案」者。番組を作るのは制作の皆さんです。その視点を忘れず、こちらが伝えたいことと社会で報じるべきヒト・モノ・コトに着地させる接点を見つけて企画を検討する思考が必要です。
よくある笑い話ですが、制作の皆さんは驚くほどテレビを観ていない。というか、私たちのようにテレビパブをご提案しているPR会社の人間が観すぎているのですが…他局でやってた、他番組でこんなことやってた、というのは(もちろん相手に寄りますが)「へ―そんな取り上げ方してた、あっちの局」という話に発展したり、担当番組でも他曜日のことは知らなかったりもするので視点の交換をしあいながら話し合えるコミュニケーションが取れるようになったらこの思考の完成形です。
情報提供の仕方|”ネタ”ではなく”素材”を渡す
制作者が嫌うのは「完成された宣伝パッケージ」。
彼らはクリエイターであり、自分たちで番組を作り上げることがお仕事です。
PRパーソンが心がけるべきは、「こう放送してください」はもちろん、「こう放送してほしい」と思うことすら思考の完成がされていないということ。
必要なのは、「これを使って番組企画を作ってほしい」という素材提供の姿勢です。
具体的には、専門家コメント・独自調査データ・映像映えする現場・感情移入できる当事者の声など、番組の”部品”になれる情報を複数用意することが効果的です。
私たちが「メディア向けの」ファクトブックを作りましょう、ということが多いのもそれが理由。
最初から様々な素材、直接的に対象案件の説明だけでなく、周辺動向や関連業界のこともまとめた素材を制作者が自由に選び、組み合わせられる余白を残すことで、「使いやすいネタ元」として信頼関係が生まれるからです。
また情報は鮮度が命であり、情報提供のタイミングは放送スケジュールを逆算して「制作会議に間に合う日程」で届けることが鉄則。
これも大別すると、
✅ドキュメンタリー
✅収録があるバラエティ番組
✅収録が無い(VTRだけ、スタジオ収録だけなど)のバラエティ番組
✅生放送の報道・情報番組の企画・特集コーナー
✅生放送の報道・情報番組のニュース企画
の順に会議のリードタイムが長く、1年・半年前からプロジェクトごと提案するものから、一般的な長めの企画で3-4か月前の始動、2か月前ならもうバラエティは間に合わない、ニュース企画は前日当日に放送が決まることもあるので1ヶ月程度で間に合うものもあります。
話し方|「15秒の口頭ピッチ」で勝負する
制作者は多忙で、長い説明を聞く時間も忍耐もないし、徹夜明けだったり、違うことを考えてたり…いきなり提案の案件をもらっても何のことやら。タイミングを見図らなければならないのは上司に上申するのと一緒ですが、それに加えて、最初の15秒で「面白い」「話を聞く価値がある」と感じさせられなければ、どれだけ詳細な資料があっても意味をなしません。
効果的な話し方の型は「驚きの事実→社会との接点→映像的な見せ場」の三段構成。
例えば「〇〇を知っていますか?実は日本人の5人に1人を〇〇を経験しているのに、知られていません。その背景には××という社会変化があって、実際にこういう現象がココで起こっています、取材のアテンドも出来ます」という流れ。
制作者が思わず「それ、どういうこと?」と前のめりになる”問い”を冒頭に仕込む話し方が理想的で、説明ではなく「好奇心への点火」と「自分が担当する番組・企画との合致性」を意識することが肝要です。
また、専門用語やPR業界の言葉は極力避け、制作者が「会議に上げやすい言葉」で話すことも重要です。
資料の作り方|「番組会議で一人歩きできる」設計にする
私どもはまれに番組のスタッフになることもあり、番組会議に参加することもありますが、原則、私たちPRパーソンが番組会議に同席することはできません。
私たち不在の制作会議で、資料だけで企画が伝わることを前提に作成すると、制作者の手間を省け、企画提案してもらえる可能性が向上します。
担当者がその資料を上司や他のスタッフに見せた時に、自分の口で説明しなくてもポイントが伝わる「一人歩きできる資料」が理想的です。
構成は「企画の核心(1行)→なぜ今か(社会背景)→視聴者へのベネフィット→提供できる素材一覧→出演候補・ロケ候補」の順を基本とし、
ビジュアルは文字より写真・図解を優先し、A4で2〜3枚に収まる内容に。
数字やデータは必ず出典付きで記載し、信頼性を担保することが必要ですが、リンクを貼るなどした方が親切です。
情報量やエビデンス、データや画像などが多くなる場合は、企画の流れ・構成だけをまとめた「企画メモ」を1枚でまとめ、詳細資料を別添することもあります。装丁や色使いよりも「読んだ人が次のアクションを取りたくなるか」を基準に洗練させていくこと、次に構成案だけでも「画が想像できる」ように作り込むことが肝要です。
ゴールの決め方|「視聴者が得するか」を唯一の判定軸にする
最終的に制作者を動かす決め手は「視聴者がこれを見て、得をするか・感動するか・行動が変わるか」という問いへの明確な答え。
企業の利益や認知拡大がゴールのPR担当者と、視聴者満足度がゴールの制作者では、そもそも利害が異なります。
この溝を埋めるために、PRパーソンは「視聴者への価値提供」を企画のゴールとして常に意識する必要があります。実はこれが一番難しい。
具体的には「このVTRを見た視聴者は何を知り、何ができるようになるか」を一文で言語化し、それを提案の核に据える。
視聴者が有益に感じるような情報設計であれば、クライアントの情報は自然と番組に組み込まれます。
PRの成功とは「放送されること」ではなく「視聴者の行動や意識が変わること」。そのゴール設定の高さが、最終的には制作者から長期にわたって信頼されるPRパーソンと、ただの御用聞きで終わるPRパーソンの分岐点になるのです。
逆に言えば、視聴者=生活者の有益になるような情報に作り上げられていなければ、まだその企画は完成形ではないのです。
共に「PRすること」を第三者視点で見つめて、よりよいメディアへの情報提供に繋げましょう!




