近年、Dior Beautyの吉沢亮さんをはじめ、YSL Beautyの平野紫耀さん、NARSの横浜流星さんなど、人気男性タレントが女性向け化粧品の公式アンバサダーやイメージキャラクターに起用されるケースが急増しています。しかも、国内の手頃なブランドだけでなく、外資系のデパコスにまでこの傾向が加速化。SNSでは「推しが使ってるなら試してみたい」という声が相次ぎ、売上貢献も顕著です。一方で「女性用なのに男性?」という違和感の声もまだ残ります。この現象は単なる流行ではなく、美容市場の構造変化を象徴するものなのですが…
意外と古くからの手法
この傾向のルーツは意外と古く、1996年に遡ります。当時SMAPの木村拓哉さんがカネボウの女性用リップCMに出演し、口紅が爆発的に売れた事例が最初のブレイクでした。ただし、このときのキャッチコピーは「スーパーリップで攻めてこい」。キャラクターとなった男性タレント自らが使用者でなく、リップをつけた女性に“攻めてきて”と迫る対象としての起用でした。
本格的な「トレンド」化は2018〜2020年頃、K-POPアイドルの影響でジェンダーレス美容が日本に波及し、メイベリン(錦戸亮さん)、NARS(横浜流星さん)、THREE(吉沢亮さん)などが相次いで男性を起用。2020年のコロナ禍で鏡を見る機会が増え、男性のスキンケア意識がさらに高まりました。そして2021年に吉沢亮さんがDior Beautyのアンバサダーに就任。2026年現在もこの流れは加速しており、男性アンバサダーの代表例がさらに増えています。
90年代のカネボウの起用時のように「推しの存在」が購買動機になるのは同様ですが、「推しと同じものを使う」用になってきたのが大きく異なる点です。
コスメのキャラクターに男性が起用される3つの理由
1つ目は、言わずもがなの「ジェンダーレス・多様化の浸透」。
「美容は性別に関係なく自分を磨くツール」という価値観が定着。ある調査では10代女性の85%以上が男性の美容活動を好意的に見ています。企業はSDGsやダイバーシティを体現するメッセージとして、男性起用を活用。従来の「この女性みたいになりたい」という自己投影型広告から、「商品そのものの効果に目を向けさせる」スタイルへシフトしたのです。
2つ目に、マーケティング効果の高さです。吉沢亮さんやSnow Manのラウールさんなど、熱心な女性ファンが多いタレントを起用することで、従来の女性ターゲットを維持しつつ新規ファン層を獲得できます。SNS拡散力も抜群で、ファンによる「推し効果」が購買を後押し。
男性の清潔感あふれる肌が「商品の効果」を自然に体現する点も消費者から支持されています。
3つ目に、男性美容市場の拡大です。メンズコスメ市場は世界的に急成長中で、日本でもスキンケア使用率が上昇。女性用コスメの広告に男性を出すことで「男性も美容を楽しもう」と啓蒙し、新市場を開拓しています。2025〜2026年のデータでも、男性のスキンケア習慣が4割を超え、ユニセックス商品の割合が増加。韓国発の影響も大きく、K-POPアイドルが女性用コスメの顔になるスタイルが日本に定着しました。
この傾向は続くのか?
この現象は今後も続き、むしろ「ジェンダーレス」という言葉自体が不要になるほど自然なマーケティングの“通常モード”になると予測されます。男性を起用するか、女性を起用するか、ではなく、誰を起用するかと検討されているのが現状です。
昨年度もメンズビューティの拡大が顕著で、男性アイドルアンバサダー起用が「推し活」ブームと連動。男性がメイクや肌管理をSNSで公開する動きが一般男性にも広がり、専用品以外も含めた実態市場はさらに大きいと見られます。
市場予測では、日本メンズコスメ市場は2030年頃までに大幅成長が見込まれ、フレグランスを中心にユニセックス商品が急増。シェア美容(家族やパートナーで共有)も鍵となり、日常的なスキンケア・UVケアで性別を問わない製品が主流化すると予想されます。
また、AIや最先端技術を活用したパーソナライズドケア、美容医療に着想を得た高機能成分(例: 次世代コラーゲン)のハイブリッド製品が増え、男性も女性も「個人の美」を追求する時代へ移行しています。
一方で、違和感を持つ中高年層も一定数残る可能性がありますが、若い世代の受け入れが進む中、多様な表現のバランスが重要。企業は「ジェンダーレスを前面に押し出す」より、「誰でも自分らしく使える」自然な訴求にシフトすべきです。将来的には、男性のフルメイク市場もZ世代を中心に拡大し、伝統的な女性モデル中心の広告と並行して、ユニセックスラインの強化やクロスジェンダーコラボが標準戦略になるでしょう。
こうなってくるとむしろ女性の起用を続けている方が目立つ、ということも考えられます。
綾瀬はるかさんはSKⅡのアンバサダーを15年以上続けています(近年フェードアウト化もしましたが)。コーセーは今田美桜さんを起用して5年。
今後は男性も継続して起用されていくのかとは思いますが、機能性を謳うものはまだ女性の方が浸透しやすいと捉えられている向きも強いかと思います。
このあたりは、幅広い年齢層の男性が基礎化粧品を使用するようになるかどうか…文化や気候の変動などともかかわってくるかもしれません。
マーケティング指標として
美容業界は常に時代を映す鏡です。この潮流を「脅威」ではなく「機会」と捉え、他の業界のPRとしても参考に出来る部分だと思います。柔軟に戦略をアップデートしていきましょう。2026年以降もメンズビューティの本格始動と技術革新が鍵となります。




