アンバサダーの正しい広報活用

アンバサダーとは、企業やブランドの価値観を体現し、その魅力を自然な形で伝える代弁者です。従来の広告とは異なり、アンバサダーは信頼性と親近感を武器に、消費者との間に感情的なつながりを築きます。
現代の消費者は、企業からの一方的なメッセージよりも、信頼できる個人からの推薦を重視する傾向が強まっています。アンバサダーは、この消費者心理を活用した効果的なPR戦略の核となります。

昨今のアンバサダー・キャラクター契約の頻発から、弊社クライアント様でもご相談が増えてきましたが、「KOLとスポークスパーソン」以前に、KOLやスポークスパーソンとして設定する「アンバサダー」を、「広告キャラクター」ではなく広報的に親和性のある対象としてどのように起用・活用すればよいか、認識されていないことが多いのを実感しています。
その本質的な違いや選定基準、一緒に活動していく親和性について理解し、一緒にブランドを向上させていきましょう。

広告キャラクターとアンバサダーの違い

まず、広告キャラクターアンバサダーの違いを理解することから始めましょう。この本質を違えると、ステークホルダーにも重大な誤解を生むことになります。広告キャラクターは、企業が用意したメッセージを決められた形で伝える「スポークスパーソン」的な役割に留まります。一方、アンバサダーは、ブランドの価値観を自らの言葉で表現し、個人の信念に基づいて支持を表明する「代弁者」です。
この違いを理解せずにアンバサダーを起用すると、消費者に「仕組まれた宣伝」として受け取られ、かえってブランドの信頼性を損なうリスクがあります。アンバサダーの最大の価値は、自発性と真正性にあることを常に念頭に置く必要があります。

消費者側に立って代弁していただくか、企業のメッセージを企業目線で発信していただくか、その違いでとらえると分かりやすいと思います。

アンバサダーの類型と選定基準

「アンバサダー」と言っても、業種やブランドによって、また目的によって、タイプが異なり、またタイプが異なれば選定基準も変わることを、理解しておきましょう。

1)セレブリティ
著名人やタレントを起用する手法で、広範囲への認知度向上が期待できます。ただし、起用コストが高く、ブランドイメージとの適合性を慎重に検討する必要があります。重要なのは、単なる知名度ではなく、その人物が持つ価値観とブランドとの整合性です。

2)エキスパート
業界専門家や技術者など、特定分野での権威性を持つ人物を起用します。BtoB企業や専門性の高い商品・サービスに特に効果的です。専門知識に基づく発言は、消費者にとって説得力の高い情報源となります。

3)インフルエンサー
SNSで一定のフォロワーを持つ人物を起用し、デジタル空間での影響力を活用します。特定のコミュニティに対する高い訴求力が期待できます。フォロワー数よりも、エンゲージメント率とターゲット層との適合性を重視すべきです。

4)社員
自社の従業員をアンバサダーとして活用する手法です。コストを抑えながら、企業文化や働きがいを効果的に伝えることができます。内部の人間だからこそ伝えられる「リアルな企業像」が強みとなります。
リクルート目的でなく、業務内容をより良く伝える社内の取材応対者として、広報とは別途、若手社員や現場の責任者をアサインする企業が増えています。

5)顧客
「インフルエンサー」に近い関係値ですが、際の利用者や愛用者をアンバサダーとして起用する手法です。使用体験に基づく発言は、最も信頼性が高く、購買意欲を刺激する効果があります。

効果的な起用・活用プロセス

キャスティングを検討する前に、まず明確な目的設定を行いましょう。
認知度向上、ブランドイメージの向上、売上増加…具体的なゴールを設定し、それに応じてアンバサダーの類型を選択します。同時に、ターゲット層の分析と、彼らに親和性を持つ顧客を想定することも肝要です。

その目的が定まった上で、キャスティングを検討します。これを逆にする企業が多いように思いますが、目的が定まっていないと、キャスティングの段階からブレます!逆に、プロダクトやサービスに親和性のある著名人が先に決まっている場合、もう「著名人顧客」としての役割を担っていただくことが決まっていると思いますので、その立ち位置・目的をブラさないことが重要です。
特に重要なのは、その人物が自然にブランドを支持できる理由を持っているかどうかです。強引な起用は消費者に見抜かれ、逆効果となります。例えば(広告キャラクターならギリギリOKですが)お酒が飲めない・苦手と公言している著名人に、お酒のアンバサダーになってもらうなどです。

契約・運用段階では、アンバサダーの活動範囲、期間、報酬体系を明確に定義します。ただし、過度な制約は自発性を損なうため、ブランドガイドラインを共有しつつも、個人の表現の自由度を保つバランスが重要です。この自由度があることが、逆に宣伝色を押え、本当にブランドとアンバサダーがコミットしている心証をもたらします。

ブランドとアンバサダーがコミットしている心証については、いくつか具体的に対策できることがあり、
まずは起用の前に事前体験を徹底してもらい、ブランドに対して理解してもらいましょう。その上で、ブランド側からも継続的にコミュニケーションを図り、アンバサダーがブランドと接触する機会を積極的に持つことが肝要です。
自由度を確保した上でこうしたコミュニケーションを継続することで、アンバサダー自身の言葉で、自由なタイミング・自由な表現で発信できる環境を整えます。

この心証性が最もアンバサダーとブランドの間で重要な関係値で、最優先事項です。こうした文脈を無視した結果、「やらせ」「ステマ」などの言葉が生まれた背景を理解しましょう。過度な演出をしたり、価値観が異なるのに無理に起用したり、短期的な成果を求めたりするとうまくいかないものなのです。

アンバサダー活用の成功のために

アンバサダー戦略の成功には、互いの信頼長期的な関係構築が不可欠です。広告キャラクターとは根本的に異なる存在であることを理解し、アンバサダーの自発性と個性を尊重しながら、ブランド価値の向上を図る必要があります。

プロダクトやサービスの革新の表現を取り入れながらも、顧客の感情に訴える本質的な価値を見失わないことが、成功するアンバサダー戦略の鍵となるでしょう。消費者の信頼を獲得し、持続可能なブランド成長を実現するために、戦略的かつ誠実なアプローチを継続していくことが求められます。

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