生成AIと広報

宣伝・広報業務における生成AIの活用は、業界に大きな変革をもたらしています。

そもそもAI(人工知能、既存の情報を活用して処理する分析型)からAGIなどの生成AI(新しい情報を生成する創造型)へ、AIの世界自体も日進月歩の進化を遂げているので、広報業務に活用する方法も日々変革しています。
それに伴ったルールも、広報の定義を逸脱しないレベルを鑑みながら、進めていく必要があります。

生成AIの広報での活用法

具体的に、広報でのどういった業務に活用されているでしょうか。現状の様々なアプリの使い勝手から、弊社でも以下のような業務で活用しています。

1) コンテンツ制作の効率化
生成AIは文章作成、画像生成、動画編集において大幅な効率化を可能にします。プレスリリースの初稿作成、SNS投稿文の量産、キャッチコピーのアイデア出し、ビジュアル素材の生成など、従来時間のかかっていた作業を短時間で実行できます。

ここで気を付けなければならないのは、あくまで「初稿」「アイディア出し」であるということ。
フォーマットや文言の参考として、あくまで企業のレギュレーションが守られているか確認しつつ、参考レベルで判断しなければなりません。

2) パーソナライゼーションの実現
顧客データを活用して、個々のターゲットに最適化されたメッセージを自動生成することができます。年齢、性別、興味関心、過去の行動履歴などを基に、よりパーソナルで効果的なコミュニケーションを大規模に展開できます。
膨大な市場調査データやソーシャルリスニングデータから、より詳細で実用的なペルソナを自動生成することも可能になります。市況の変化も反映した動的なペルソナ設計や、競合との分析の自動化なども可能にします。

ただ、どういったデータを基にするか、の初期設計は有機的に実施する必要があります。
この初期データの設計が、有効なAIの活用になるかどうかが肝になります。

3) 運用の最適化
リリース配信やキャンペーン実施の時期、SNSのリアルタイムの炎上検知など、各プロジェクトの運用の最適化をするのも生成AIが得意とするところです。

リリース配信においては、過去のエンゲージメントデータや競合の動向を分析し、時間帯だけでなく、曜日、季節、イベントとの関連性などクロスデータを考慮することを可能にします。
炎上検知では、ソーシャルメディア上での否定的な言及の急増を検知し、炎上の兆候を早期に発見できます。影響範囲の予測や対応の緊急度判定も可能です。

これまでのデータ分析は過去の実績を踏まえた予測でしたが、生成AIでは継続的に最新の動向を予測するとこまで可能になるのが特徴です。

4) 多言語展開の効率化
もっとも活用されているのは多言語展開かもしれません。
単純な翻訳を超えて、各国の文化的背景や法規制を考慮したローカライゼーションを支援できるのが生成AIの能力です。
現地の慣用表現や文化的タブーを反映した、より自然で効果的なコンテンツ制作が可能になります。

生成AIを活用する上で留意すべき点

広報のような有機的な業務が多い現場でも、活用次第で大幅に作業負担を減らすことができる生成AI。
とはいえ、まだまだ新しい技術で、多くのアプリがβ版の状況のため、使う側がリスクを理解していなければなりません。

品質管理の重要性
生成AIの出力は必ずしも完璧ではありません。事実確認、ブランドトーンとの整合性、法的問題の有無など、人間による最終チェックは不可欠です。特に企業の公式発信では、一つの誤りが大きな信頼失墜につながる可能性があります。

著作権とコンプライアンス
AIが生成したコンテンツの著作権帰属は複雑で、学習データに含まれていた既存作品との類似性も問題となり得ます。また、景品表示法、薬機法など、業界特有の規制への適合性も慎重に確認する必要があります。

ブランドアイデンティティの維持
AIによる効率化を追求するあまり、ブランド独自の個性や人間味が失われるリスクがあります。企業の価値観や文化を反映した、一貫性のあるコミュニケーションを維持することが重要です。

データセキュリティ
顧客情報や企業の機密情報をAIシステムに入力する際の情報漏洩リスクは深刻です。適切なデータガバナンスとセキュリティ対策が必要不可欠です。

こうやって整理していくと、広報に関しての知識が無ければないほど、生成AIを気軽に使うのはリスクがあることがお分かりいただけると思います。
広報の基本・基礎の活動が何の目的でどういうルールに基づいて行われるべきものなのか、原理原則が理解できていれば、これまでの業務が大幅に簡略化し、より高度な広報活動を行うことができると言えると思います。

今後の課題

これからの活用において、生成AIをよりうまく活用するには、どういった課題があるでしょうか。

人材スキルの転換
従来の宣伝・広報担当者には、AIツールを効果的に活用するための新しいスキルセットが求められます。プロンプトエンジニアリング、AIとの協働方法、生成物の品質評価能力などの習得が急務です。

規制環境への対応
AI生成コンテンツの表示義務、生成AIの利用に関する業界ガイドライン、国際的な規制動向など、急速に変化する法的環境への適応が必要です。
これらが今どういう規制がかかっているか、常にリサーチしながら活用することが必要でしょう。

生成AIは宣伝・広報業務に革命的な変化をもたらしていますが、技術の力を最大限に活用しつつ、人間の創造性と判断力を維持するバランスが成功の鍵となるでしょう。継続的な学習と適応により、この新しい時代の宣伝・広報のあり方を模索していくことが重要です。

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