テレビ番組が商品やサービスについて取材したくなるのは、最新の「情報」。そして、そこに伴う「物語」です。
新製品の性能やサービスの仕組みをそのまま伝えるだけでは、視聴者の心は動きません。それが「ブーム」や「トレンド」に沿っているから、新奇性があるから、取り上げるのです。
でも、企業が伝えたいのはそれだけではないですよね。ニュース性はない、新奇性はない、「技術開発」や「沿革のエピソード」など、道程・過程がテレビパブリシティ成立の肝になることもあります。
イチ社員が10年間諦めずに開発を続けた経緯や、創業者が家族の体験から事業を始めたいきさつ、現場で起きた予想外のエピソードには、観る人を引き込む力があります。テレビ番組の制作者は常に「この企画には“物語”があるか」を判断基準にしているため、私たちは必ず「対象」に対して、「物語の種」を引き出すことが最も重要な仕事になります。
シナリオ、エピソード、ヒストリー、ドラマ…モノ・コト・ヒトの中に、どんな「物語」がありますか?
日本特有?「物語」が必要な理由
なぜ日本人が特に「物語」に惹かれるのかというと、いくつかの背景があります。
第一に、多様なルーツを持つ国に比べ、日本は地域や企業、家族の歴史が比較的「狭く深く」継承されやすく、個人や組織の歩みそのものがドラマとして認識されやすい土壌があります。
第二に、テレビというメディア自体が「お茶の間の共感」を重視する文化を持ち、難しい説明よりも人間味のあるエピソードのほうが圧倒的に伝わりやすいという特性があります。例えば、終身雇用や長期取引といった「継続」を重んじる価値観が根強く残っているため、「何年もかけて」「諦めずに」「親から子へ」といった時間軸を含む物語に強く反応する傾向があります。つまり日本人にとって「物語」は単なる演出ではなく、信頼や共感を生み出すための文化的なコードなのです。
一方で、国としての歴史が中国やヨーロッパ諸国、エジプトなどより浅く、また地震などの土壌的特性による建築物の歴史の短さ、資源が少ない国で「背景」を軸とした物語自体がブランディングになるマーケティング素養があり、物語がより重要性を増している3つ目のポイントです。
“物語”には「リリース」ではなく「ファクトブック」を作ってみる
この前提を踏まえると、リリースがどうもうまく書けない…という場合も、自社の強みや弱み、特長・特徴、内規の特性などを成立するために「ファクトブック」を作ると、新しい情報をまとめるプレスリリースをまとめる際にも、軸が固まりやすくなります。
それでも広報トピック収集に手詰まりを感じるときは、私たちPR会社のような第三者の視点から素材収集をするのも良いと思います。
長年その組織に居ると当たり前に思えることも、他社や他業界から見ると面白かったり意外だったり。
私たちPR会社は、リリースでもファクトブックでも、「素材だけ渡してください」とご依頼することが多いです。苦労話、笑い話、失敗談、社内の小さな出来事——表現方法や完成度は問いません。受け取った断片を「物語」として再構成し、それに合致するテレビ番組を選んでこちらから提案する、というのがPR会社の役割であることを明確に伝えています。
“素材収集”のアプローチ
とはいえ、いきなり「何かエピソード、無いですか?」と社内で聞きまわったところで出てくるものでもありません。
これは経験上ですが、一番ドラマを持っていそうな商品開発などが、一番「そんな当たり前のことを話すべきではない」と職人気質で回答してもらえないことも多い。
まず、経営者や創業者へのヒアリングでは「なぜこの事業を始めたのか」「最初にうまくいかなかったことは何か」「忘れられない顧客や取引先とのやり取りはあるか」といった、業績ではなく“感情が動いた瞬間”を聞き出す質問を用意します。決算や戦略の話ではなく、個人的な体験談を引き出すことがポイントです。
次に、現場社員や開発担当者へのインタビュー。新商品やサービスの裏側には、必ず「想定外の苦労」「偶然の発見」「諦めかけた瞬間の逆転」といったドラマが存在します。これらは経営層が把握していない場合が多いため、現場レベルでの聞き取りを別途設計する必要があります。
また、社内向けの簡単な「エピソード収集シート」を用意し、社員から自由記述形式で小さな出来事を募るのも効果的です。「お客様に感謝された出来事」「社内で話題になった珍しい依頼」「長年のお客様との関係」など、テーマ別に項目を設けることで、本人が気づいていない“物語の種”を可視化できます。
さらに、顧客や取引先からの声(感謝のメール、エピソード的な感想)もストックしておくよう依頼します。これらは第三者視点の物語として、企業の取り組みに説得力と人間味を与える材料になります。
そしてもう一つ重要なのは、社史や周年事業、地域との関わり、創業者の出身地や家族の歴史といった「時間軸を持つ情報」を整理しておくことです。これらは特に記念年や周年企画と組み合わせることで、テレビ側にとって企画化しやすい「物語」になりやすい傾向があります。
テレビの取材を獲得する“物語”形成に慣れると、取材要素も見出せる!
PR会社側はこうして集めた断片的な素材を「起点」「葛藤」「転機」「現在」という物語の骨格に当てはめて整理し、どの番組のどのコーナーに合致するかを判断した上で企画書や提案資料にまとめています。
トピック形成に手づまりな時、どうやってテレビの取材を獲得すべきかネタがない!と絶望している広報担当者の方がいらっしゃったら、まずは「素材は完璧でなくていい、断片でも収集」を目的づけることで、継続的に物語の種が集まる関係性を構築することが、テレビパブリシティ成功の土台となります




