今月の炎上事案から「広報」という仕事を改める

今月、PR業に従事する私たちには、広報の質の低下と難しさが感じられる2つの炎上事案がありました。
“燃やした”方も“燃やされた”方も、どっちもどっち…という感じもしますが、
この2つの事案、共通点と相違点がありました。
「ひとり広報」をされている企業様などでは不安に思うこともあるかと思いますが、広報だけでなく一般の法律・社会規範に則っていればあまり生じない事案なので、あまり不安に思うこと無く、ただ日々の自分の言動を律する意味でも、振り返りたいと思います。

問題の共通点と相違点

一つはこれから捜査される事案かもしれず、動向が変わってきそうな印象なので、簡単に事案だけ触れておくと、

1)在京キー局のビジネスドキュメンタリー番組の取材を受けていた上場企業の広報担当者が「仕込んでいた番組が放送される」とXで投稿
2)兵庫県知事選のSNS施策に関わってきた広報事業主が「私がやってきました」とXで投稿

これら共通点は、その内容からもわかるように、
①Xの投稿から始まっていること
だけでなく、
②「広報の見解」が間違っていたこと
にあると思います。

1)は私たち広報に携わるヒトなら多くは理解していることですが、メディアとの向き合いで、タイアップでもCMでもない「取材」を請ける形であれば、誰しもNGワードとして特に気を付けている言葉です。
良く企業様からの問い合わせで「どのメディアに仕込めますか?」と聞かれることがありますが、その段階で相手に言われたことでも私どもでは「仕込む、という考え方ではなくて、どうやったらメディア取材して頂けるか、メディアが取材する必然性を感じてもらえるか、考えるのが我々の仕事です」とお伝えすることが多くあります。
2)についてはもう…言わずもがなで、政党や選挙に関わるPR会社は多く存在しますが、特に日本の司法制度においてセンシティブなところで、自ら何をやって来たか開示することは絶対に禁じ手です。ただ2)はほぼ自分がメディアとなっている方で、他のお仕事と同様に考えてしまった、広報としての個人の見解が間違っていたのだろうと思います。
広報というのは自社やクライアントの、「業務」「企業」が顔なので合って、自分が前に出るべきものではないのです。
勿論一部の業態で「プレス」「ブランドマネージャー」と言われるような立場の人がそのブランドの顔になっている場合も有りますが、そういう立場の人はそれだけの教育をされてそのポジションにいて、適切な発言や露出だけをしています。だいたいがファッションやコスメなどに多いし、ハイブランドになればそういう人たちでも前に出ることを避けていたりもします。

1)についても2)についても、この「広報の見解」については、いずれも広報なら当たり前の大原則で、教えられるものでもないし、文化として根付いていなければならないものですが、SNSという誰でも見られる場で自ら発信してしまったことで、「経験不足」「勉強不足」では済まされない事態に発展してしまったと思います。


同じようにXから派生して炎上して問題化、という内容が同じようにとらえられがちですが、広報の観点からみて大きく異なる相違点は、
①自社に対する発言かクライアントに対する発言か
②法律にかかわるか
ということです。
1)の事案は自社の広報業務について、対メディアに誠意を欠いた発言、ということで、自社内での責任とメディアからバッシングをうける、ということになりますが、
2)についてはクライアントのことを発信してしまっている点で、PR会社としては決してあってはならないことですし、実際公職選挙法が存在する上で、違法性を調べられる事態に発展しています。

広報とは、PRとは

ここまで騒動が大きくなってしまったのは、Xという場での発言だったこともありますが、
広報に携わる立場であれば、誰しも「気持ちはわかる」という部分と「それは禁じ手だよね」と思う部分があったと思います。
大型のビジネスドキュメンタリーに、上場のタイミングで取り上げられるという、広報としてはこの上ない機会。取材に対応するのが、本当に大変な番組ですし、充実感もあったと思います。
また、圧倒的不利な立場の選挙戦で、その効果があったとされるSNSの戦略を成功させたこと自体は凄いことです(ホントにSNSだけで票が動いたのであれば有権者自体の考え方も改めなくてはならないと思いますが…)。

これはSNSがモノを言う時代になった、ということではなくて、
SNSの使い方を分かっていない・広報の原則を分かっていない担当者が、招いた自体で合って、広報自体がリスクの多い仕事だということでも、SNSが影響力を増しているということでも、無いと私どもは考えています。

広報とは、「ステークホルダーに広く知らしめること(もちろん良い印象をもって)」
PRとは、「パブリックにリレーションすること」 です。

どんな手法でも、どんな案件でも、自分のことでないものを知らしめるということの責任を自覚し、勉強し続けていれば、間違うことはない事態だったと認識しています。

特別ではない、広報という仕事

ただ今回の事象はSNSの発言から端を発しており、
広報職に就いていないヒトでも問題化する可能性がある事態だったと思います。

SNSというのが公の発言である、というのを、まずはしっかり認識していくことが第一歩、と言ったら簡単すぎますが、
まだここ10年くらいのメディアですし、どんどん新しいSNSのプラットフォームが出てきているので、その運用は社員に徹底する必要がありそうです。

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