パブリシティは「目的」でなく「結果」~クライアントとの対話から見えるPR本来の価値

テレビパブリシティは目的でなく結果

「今回の施策で、どれくらいテレビ露出が獲得できますか?」

クライアントとの打ち合わせで、この質問をいただくことがPR会社としては少なくありません。社内からの強いプレッシャー、予算承認のための明確なKPI、競合他社の露出実績—。クライアント担当者の方々が置かれた状況はもちろん、その切実さも分かった上で日々ご提案しています。

しかし、PR会社として、私たちはここでクライアントの理解を求めなくてはなりません。なぜなら、「パブリシティ獲得」を最初のゴールに設定した瞬間、PRの本質的な力は失われてしまうからです。

この問いに真摯に向き合うことは、クライアントの期待に応えられないという苦しさを伴います。
そのために「成功報酬」という形でのメニューもご用意しています。
でも、だからこそ、その上でご理解を得なくてはならないことは、
「パブリシティとは何か」そして、「PRが本当に生み出すべき価値とは何か」という根本的な問いです。

パブリシティは「約束」はできない、してはならない

「テレビに出たけど、行列は1ヶ月で終わった」
「メディアに取り上げられるのってカンフル剤だよね」

ウエ・コーポレーションのクライアントになる前の企業様から、よくお伺いする言葉です。
弊社のお客様には、しばしばその効果と意義をご説明しているので、メディア掲載は決して花火でもカンフル剤でもないことを、ご理解いただいているのですが…
メディアでの掲載を一時期だけのお祭り的な“花火”にしてしまっているのは、実は取り上げられた企業様自身。
露出後の活動で、一時的な効果にしないことが必要なのです。

メディアに露出することがゴールではない

まず、率直にお伝えしなければならないのは、どんなPR会社も、パブリシティを確約することはできないということです。
これは能力や経験の問題ではありません。パブリシティの本質的な性質によるものです。

テレビや新聞、雑誌などのメディアは、広告枠を購入する広告とは異なり、編集権を持つ記者やディレクターの判断によって取り上げられます。彼らが「これは視聴者・読者にとって価値がある」と判断して初めて、報道という形で世に出るのです。

つまり、パブリシティとは「獲得する」ものではなく、「獲得される」もの。
メディアの方々が日々向き合っているのは、私たちのクライアントではありません。その先にいる視聴者や読者です。「この情報は、私たちの読者にとって本当に価値があるだろうか」「視聴者の生活を豊かにする情報だろうか」—そうした意義を叶える内容がクライアントの情報に合致している場合に初めて、パブリシティは生まれます。
そして私たちPR会社のスタッフは、その「合致する要素」を求め続けてメディアと折衝しているのです。

「露出のための施策」が陥る罠と社内のプレッシャー

では、なぜ「パブリシティ獲得」を目的にした施策は機能しにくいのでしょうか。

一つの例を挙げましょう。ある企業が新商品を発売する際、「テレビで取り上げられやすい企画を」という要望をいただいたとします。そこで思いつくのは、タレントを起用したイベントや、大規模な街頭プロモーション、インパクトのある数字を打ち出すキャンペーンなどです。

確かに、こうした施策は一見「テレビ映え」するように見えますが、あまりPR的効果は挙げられない場合が多いです。
施策の根底に「生活者にとっての本当の価値」が欠けているケースです。タレントを呼べば人は集まるかもしれません。でも、それは商品そのものの魅力や、ブランドが提供する新しい体験とは別のものです。大規模なキャンペーンは数字を生むかもしれません。でも、それが生活者の課題を解決したり、心を動かしたりするものでなければ、単なる販促施策の一つでしかありません。
タレントを呼んだうえで何をするのか、街頭プロモーションは何を伝えているのか。
または、そのタレントをなぜ呼んだのか、大規模なキャンペーンはどういう意図があるのか。
生活者の視点かラ企業が考えたストーリーが無ければ、メディアからも興味を持たれなくなってしまうのです。

メディアが求めているのは、「意味のあるストーリー」です。それは、生活者の共感を呼ぶもの、社会に新しい視点を提供するもの、誰かの課題を解決するものです。そうした本質的な価値がなければ、どんなに表面的に派手な施策でも、報道価値は生まれません。

ここまで読んで、「理想論は分かるけれど、上司や経営層を説得できない」という議論になる…と感じる担当者、同業者様がいらっしゃると思います。
というか、我々も日々その難しさと向き合っています。
でも、だからこそ、私たちPR会社の役割があると考えています。最大限テレビをはじめとするメディア露出を叶えるための情報収集と社内リソースの発掘をお手伝いしながら、クライアント企業の社内に対しても、PRの本質的な価値を伝え、正しい評価軸を共有することです。

同時に、KPIの設定方法を見直すことです。「テレビ露出○本」という数値目標は分かりやすい反面、PR活動の本質的な成果を測るには不十分です。代わりに、

  • ブランド認知度・好感度の変化
  • ターゲット層からの問い合わせや購買行動の変化
  • メディアリレーション件数(取材対応だけでなく、記者への情報提供や関係構築の実績)
  • 獲得したパブリシティの「質」(記事の論調、掲載文脈、ブランドメッセージの反映度)

を取り入れてみることをご提案しています。
こうした複合的な指標によって、PR活動が生み出している本当の価値を可視化することができます。
また、短期的な露出だけでなく、中長期的なブランド構築の視点を持つことも重要です。1回のテレビ露出よりも、継続的にメディアから信頼され、「このテーマならこのブランド」と想起される関係性の方が、はるかに大きな価値を持ちます。

PRの本質は「関係性の構築」

最後にーー
このPRの本質、すなわち「メディアと企業の関係性の構築」は、「クライアントとPR会社の関係性の構築」にも同様のことが当てはまります。私たちPR会社の仕事は、クライアントの要望をそのまま実行することではありません。ブランドが本当に必要としているもの、生活者が本当に求めているもの、そしてメディアが本当に価値を感じるもの—その三者の交点を見つけ出し、形にすることです。

時に、それはクライアントの当初の希望とは異なる提案になるかもしれません。「テレビ露出が欲しい」という要望に対して、出来ないこと出来ること、すべきこととその可能性を明示するように尽力しています。

これは、クライアントの要望を拒否しているのではありません。「露出が無い」という不満足を解消するためのもので、なぜか、どうすべきか、ということの手段からご提示しているためです。

クライアントの皆様には、ビジネスの最前線で感じている課題や、社内の状況を率直に共有していただきます(そのためにNDAがあるのですから…)。その上で、共に「どうすれば、このブランドが生活者に愛されるか」「どうすれば、社会に意味のある価値を提供できるか」を考えていく。そのプロセスこそが、本当の意味でのPR活動だと信じています。

…もちろん、テレビパブリシティを強みとしている私たちにとっては、時にそうでない仕事もありますが、クライアント様と直接向き合っている場合は、その理解もしていただかなくてはなりません。

パブリシティは、確かに魅力的です。一度の露出で多くの人にリーチでき、第三者からの評価として信頼性も高い。しかし、私たちが本当に目指すべきは、生活者にとって価値のある体験を創り出すこと。ブランドと生活者の間に、意味のある関係性を築くこと。そして、その過程で生まれる本質的な価値を、メディアが「これは伝える価値がある」と判断してくれること。

パブリシティは、この一連のプロセスの「結果」として生まれるものなのです。そして、そのプロセスを最大限に機能させるには、クライアントとPR会社の間に、深い信頼関係と情報共有が不可欠です。表面的な情報だけでなく、ブランドの奥深くにある物語、日々の小さな発見、時には失敗や葛藤まで——すべてを共有し、一緒にストーリーを作り上げていく。

そのお手伝いをさせていただきたいと考えています。

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