どれほど精緻なPR戦略を描いても、それを活かすのは人と関係性。PR会社はPRのプロですが、企業の広報担当者が「共に動く」という発想が無ければ、双方のポテンシャルが半減します。
PR会社はあくまで「外注先」ですし、「パートナー」と思ってほしい、などとは思っていませんが、PR会社はクライアントに伴走したいと考えています。どちらも自分の都合などでなく、企業や事業の広報にとって最適な活動を、クライアントは主体的に、PR会社は客観視して、進めていけるときに最大のPR効果を生みます。
広報担当者がPR会社とパートナーシップを築くためにはどうしたらよいでしょうか。
PRとSPの違いを知ることが、すべての出発点
PR(パブリック・リレーションズ)とSP(セールス・プロモーション)は、しばしば混同されますが、目的も時間軸も、そして成功の定義もまったく異なります。
SPは短期的な販売促進を目的とし、クーポンやキャンペーン、POP広告などを通じて購買行動を直接刺激するもの。対してPRは、組織と社会との長期的な信頼関係(リレーションズ)を育てる営みです。メディア、生活者、行政、投資家、従業員——さまざまなステークホルダーとの認識を継続的に形成することが、PRの本質です。
この違いを理解しないまま、「テレビに出してほしい」「SNSのフォロワーを増やしてほしい」といった点のみの指示に留まると、PR会社は事実上のSP代行業者でしかありません。短期成果が出なければ評価が下がり、PR会社はますます小粒な施策しか提案できなくなる——そんな悪循環に陥りやすいものです。
「テレビに出したい」「SNSのフォロワーを増やしたい」それがクライアントの目標ならよいのです、一緒に動きます。でも、それはなぜなのか。その先の目的を共有させていただけなければ、良い広報活動はできません。PRの成果は「露出量」ではなく「どう受け取られたか」で測られるはずです。
情報は「与えるほど」戦略が深まる——相互コミュニケーションの設計
PR会社が力を発揮できない最大の原因のひとつが、情報の非対称性、つまり広報担当者が「必要なことは伝えた」と思っていても、PR会社から見れば「背景がわからない」「企業としての意図と広報としての見解が読めない」という状況です。
PRは「文脈」の仕事。「ストーリーを大事に」などと教科書的な表現は日ごろ避けていますが、企業が何を大切にし、どこへ向かおうとしているのか。社内でどんな議論があり、どのような葛藤を経てその方針に至ったのか。そうした「内側の文脈」をPR会社が知るほど、戦略の精度は格段に向上します。新製品や新方針に関する情報は「解禁直前」ではなく、可能な限り早い段階で共有することが望ましいのです。
もちろん、PR会社からも積極的に情報を受け取ることが重要です。メディアの温度感、社会のムード、他業界のPR事例——これらは広報担当者が単独では把握しにくい情報である。「今メディアはどこに関心を持っているか」を定期的に問いかけ、双方向の情報交換を習慣化することで、はじめて「ともに考える」関係が生まれます。
これ、実はメディア関係者とのコミュニケーションも同じです。
記者は企業の本音が知りたいのです。そうでなければリリースをなぞっただけの記事になってしまいます。取材されるなら、されたいなら、生の情報を提供して「取材しがいがある」と思っていただかなくてはなりません。
そのやり取りの最たるものが「テレビの制作者とのコミュニケーション」なので、私たちはテレビパブリシティに注力を入れているのですが…それはまた別の機会に。
「成果物の依頼」から「課題の共有」へ——発注の作法を変える
クライアントのことを深く理解しようとするPR会社ほど、丸投げの依頼には応えにくい。逆説的に聞こえるが、理由はシンプルで、戦略の優先順位や企業の意思決定基準を知らなければ、何が「正解」かを判断できないからです。
発注の質を高めるためには、「課題」を起点にすることが肝要です。「プレスリリースを書いてほしい」ではなく、「認知が低い30代女性層へのアプローチに悩んでいる。一緒に方法を考えてほしい」という形で投げかけると、PR会社はその専門性を余すことなく発揮できるでしょう。この一言の違いが、提案の深さをまったく変えます。
とはいえ、課題が貴店でなくてもいいのです。弊社では必ず、なぜですか?何のために予定していますか?どういったことが課題ですか?と質問を重ねるようにしています。
フィードバックの仕方も同じで、抽象的でも理由が分かると非常に対応しやすいものです。「イメージと違う」という抽象的な表現も、理由が添えられていれば、あるいは課題が共有されていれば、「もっと信頼性を感じられるようにすべきですか?」と同イメージが違うのか、PR会社側から聞いてくれることでしょう。修正の方向性が共有され、次の提案の精度が向上し、業務のスピードアップにも繋がります。
また、企業として「言ってはいけないこと・言いたくないこと」を事前に開示し、承認プロセスと決裁者を明確にしておくことも、この作業負担を減らします。
信頼は「試す」ことで育つ——長期パートナーシップの作り方
PR会社との関係が形式的になる大きな原因は、「評価」を結果だけで行うことにあります。露出件数や広告換算値といった数値は把握しやすい指標ですが、それだけを基準にすると、PR会社は短期的な成果を追う施策しか提案できなくなります。
それを解消するには、聞かれたことに応えるだけでなく、一緒に動く・理由と共に一緒に考えてもらう、という「プロセスへの関与」を評価することが重要だと思います。
課題を早期に察知して提言してくれたか、炎上リスクを未然に指摘したか、戦略の矛盾に気づいて問いかけてきたか——そうした「プロアクティブな動き」を積極的にフィードバックとして伝えると、PR会社は担当者を「信頼してもらえた」と認識し、幅広の提案・誠心誠意のスキルの提供を行えるようになります。
企業の広報資材がどれだけ優れていても、伝えなければ・伝わらなければ存在しないのと同じ。それを活かす土壌は広報担当者が整える必要がありますが、過程を手伝わせ、共創し、「発注する側」から「プロの視点で考えさせ、企業はジャッジをする」—この意識の転換こそが、 広報活動全体の質を底上げする、もっとも確かな一手と言えると思います。




