新規のクライアント様や協業先からお問合せが増える時期。コンサルティングファームの方と、PRコンサルの商流からのPR業務について説明していて、言語が違う…と感じた違和感から、コンサルティングファームやマーケティング会社と言われるような事業体とPR会社のコンサルテーションには、明確なアプローチと発想の違いがあると感じています。
それぞれの特徴と有用性を詳しく検証してみます。
コンサルティングファームのPRコンサルテーション
コンサルティングファームは経営戦略の文脈でPRを捉えます。
そのアプローチは、PRを単独の機能ではなく、事業戦略、M&A、組織変革、デジタルトランスフォーメーションなどの大きな経営課題と統合して考えます。定量的な分析を重視し、ROIや株価への影響、ステークホルダー価値への貢献を数値で示すことを得意とします。
また、経営層との対話に慣れており、取締役会レベルでの意思決定プロセスを理解しています。グローバルネットワークを活用し、複数市場にまたがる一貫したコミュニケーション戦略を設計できます。さらに、リスク管理やコンプライアンスの観点からPR戦略を評価する能力も持っています。
そのため、企業変革期、M&A時、グローバル展開時、危機管理が経営課題と直結する場合、IR戦略とPR戦略を統合したい場合に特に有効で、CEOやCFOが直面する経営課題の一部としてコミュニケーション戦略を位置づけたいときに価値を発揮します。
PRエージェンシーのPRコンサルテーション
PRエージェンシーはコミュニケーションの専門家です。
特にメディアを始めとするとのステークホルダーと深い関係性を持ち、どのメッセージがどの媒体を通じて社会に影響するか、届くか、響くかを熟知しています。クリエイティブな発想力が強く、ストーリーテリングや感情に訴えるコンテンツ制作に長けています。
また、最近のPR会社にココがよく問われるところですが、実行力が高く、戦略立案から実際のメディアリレーション、イベント運営、コンテンツ制作まで一気通貫で対応できます。リアルタイムでのメディア動向把握と迅速な対応が可能で、ジャーナリストやインフルエンサーとの日常的な接点があります。業界特有のコミュニケーション慣習や文化的ニュアンスへの理解も深いです。
デジタルマーケティングが発達するにつれて、ストーリーテリング=インフルエンサーが作る文脈に乗っかる⇒自分たちが作るストーリーでなくとにかくバイラルすること、といった手段を目的に変えて提案することで力を発揮しているPR会社もありますが、これだけSNSが乱立・細分化されている現状で、必ずしもこのデジマの考え方が正しくないことも、クライアント側に理解され始めています。
全体のストーリー・キーメッセージがブレない状態で、かつ、各々の戦術の実行力が問われるようになっています。
新製品ローンチ、ブランド認知向上、メディア露出増加、危機発生時の即座のメディア対応、継続的なメディアリレーション構築、ソーシャルメディア戦略実行などの場面で真価を発揮します。
実務上の使い分け
コンサルティングファームが適しているシーン
✅経営戦略の再定義に伴うコーポレートメッセージの刷新
✅グローバルな企業統合におけるコミュニケーション戦略
✅レピュテーションリスクの定量評価と経営への影響分析
✅ステークホルダーマップの再構築と優先順位付け
PRエージェンシーが適している場面
✅具体的なキャンペーンの企画実行
✅日常的なメディア対応とプレスリリース配信
✅ブランドストーリーの開発とコンテンツ制作
✅ステークホルダーへのマーケティング的展開
それぞれの特長を見極めたアプローチが必要
実際には、多くの企業が両社を組み合わせて活用しています。コンサルティングファームに戦略フレームワークの構築を依頼し、その実行をPRエージェンシーに委託するケースが増えています。また、大手コンサルティングファームはPR会社を買収したり協業することでケイパビリティを拡充しており、逆にグローバルPRエージェンシーは戦略コンサルティング機能を強化しています。
重要なのは、自社が直面している課題が経営戦略レベルなのか、コミュニケーション実行レベルなのかを見極めることです。そして、それぞれの専門性を理解した上で、最適なパートナーを選択することが成功への鍵となります。




