最近、日本人のアイドルや芸人までも、ハイブランドの「アンバサダー就任」「パートナーシップ契約」が話題になることが多くなりました。
「インフルエンサー」が誕生する前から、「Key Opinion Leader」や「スポークスパーソン」として著名人や専門家の力を借りてプロモーションを行ったり、ブランドイメージを伝えたりする手法はありましたが、ハイブラのKOLが、欧米人から韓国アイドルへ、そして日本人へ、と広がってきていると思いませんか?
この背景には、どのような文化や消費の変化があるのでしょうか。
アンバサダーとパートナーシップの違い
「アンバサダー」と「パートナーシップ」は、そもそもどのような違いがあるのでしょうか。
ブランドやその契約ごとによっても、「アンバサダー」も「パートナーシップ」も同じような意味をもつ場合も有りますが、一般的には
アンバサダー = ブランドの認知拡大、販売促進
パートナーシップ= 相互利益
と認識されています。
「アンバサダー契約」は企業の顔としてブランドを広める役割を持ち、マーケティングの一環として利用されます。一方、「パートナーシップ契約」は、企業同士または企業と個人が相互に利益を得られるビジネスモデルを構築するための契約です。
そのため、アンバサダーよりパートナーシップの方が長期的・対等なイメージがありますが、アンバサダーの方がブランド側がアンバサダーの著名度を活用する重用の意味合いが強いので、アンバサダーの方がタレント価値を認められている、ともいえる場合があります。
また、アンバサダーはプロジェクト制、パートナーシップはリテナー制、と捉えることもできます。
分かりやすいのは、ルイ・ヴィトンが平野紫耀さんと2024年1月にパートナーシップを締結し、25年1月に新たなメゾンのアンバサダーに起用した例が挙げられると思います。
アジア人、日本人の台頭の背景は?
欧米のファッションブランドは、アジア人をアンバサダー(昔はイメージアイコンやキャラクター、ミューズと言われていましたが)を起用することは稀でした。
スーパーモデルブームの初期のころはクラウディア・シファーや、シンディ・クロフォードが様々なブランドのアイコンを務め、ジャンルが重複しないように契約は争奪戦になっていました。
タイアップに起用するのも、広告ビジュアルに起用するのも、もちろん手足の長い欧米人モデルの方が見栄えが良いので、当然のキャスティングだったと思います。
ところがこの10年くらい、やたらとアジア人が起用されるケースが多いように思いませんか?
当初は人気が世界的になってきた韓国アイドルが多かったように思いますが、最近は日本のアイドルも起用されることが増えました。
これには2つの大きな理由があり、
●日本マーケットが安定しており、ローカライズ(日本マーケットやアジアマーケットのアンバサダーに起用することでのローカライズ)が重要視されていること
●SNSを中心に「ファンダム」化が加速していること
です。
以前は手足の長い欧米人が美しく着こなしている様子がブランディングを醸成していましたが、最近はそれぞれの国や地域に根差した文化や親近感を重要視するマーケティング手法がとられるようになっています。
また、SNSのフォロワーや熱烈なファンに寄って、様々なメディアで着用している映像やファッションウィークに参加しているアンバサダーの様子が拡散されることで、認知度が大きく広まることを期待し、アイドルだけでなく、芸人やアスリートも起用されるようなり、その分ビジュアルだけでなく、彼らの活動する領域やフォロワーの文化が重要視されるようになったのです。まさに「ファンダム」のチカラが加速したといえるでしょう。
KOLプロモーション
多様性と言えばそれまでかもしれませんが、良い面はブランドへの親近感がわくこと、懸念すべき点はブランド価値が変わってしまう可能性。
また、タレントイメージが付きすぎると、そのタレントのイメージが変わったり、不祥事が起きたりした時のリスクも大きくなります。
そのメリットデメリットは古今東西、変わりません。
一過性の売上だけを追うのではなく、ブランドを継続させるには、KOLプロモーションの原理原則を、最近のファンダム潮流だけでなく、真理でとらえる必要があると思います。