新年度、学生の方は新学期が始まりました。
今年は月曜が4月1日で、まさに週の始まりからリクルートスーツのフレッシャーズがコロナ明けの昨年より目立ったようです。
その4月1日は、20010年代からマーケティングツールとして注目を浴びるようになった、エイプリールフールでもありました。
しかし、SNSを中心としたエイプリールフールのマーケティング活用も、10年ほどたった今、既に過渡期に入っています。
マーケティングのアップデートは、年々サイクルが短くなっています。
エイプリールフールの起源
エイプリールフールの起源は諸説ありますが、16世紀ころのフランスという説が最も有力です。
欧米では、テレビや新聞などの大手メディアも公然とフェイクニュースなどを発信しますが、日本では本来個人のジョーク程度でした。
日本では、4月1日は江戸時代まで中国から伝わった「不義理の日」として、日ころご無沙汰して義理を欠いている方に対して手紙でお詫びしたり、嘘をついたことやお金を返していないことをお詫びしたりする日として習慣づけられていました。
欧米の「エイプリールフール」の風習が伝わったのは大正時代。直訳の4月馬鹿として、江戸時代から続いていた不義理の日に代わり、全国に広まっていきました。
1960年代や1970年代には、一部の企業やメディアがジョークやパロディーを行っていましたが、一般的になったのは2000年代以降、インターネットの普及により、企業のオウンドメディアの発達に伴って情報の拡散が加速し、企業やブランドがエイプリールフールのマーケティングを積極的に活用するようになりました。
2010年代になると、SNSの普及でよりその潮流が加速化します。
エイプリールフールの企業PRにおける活用
エイプリールフールは、多くの企業やブランドにとって、創造的でユニークなマーケティングの機会として利用されるようになりました。
この日は、通常の日常から逸脱し、ユーモアや驚きを提供することで、消費者の注意を引き、ブランドの知名度や好感度を高めることができるとして、以下のようなポイントで情報発信することが、ユーザーとのコミュニケーションの手法の一つとして認知されるようになりました。
- エイプリールフールには、通常のキャンペーンとは異なる、クリエイティブで斬新なアプローチが可能になる。
- 企業は、他社や自社の製品を茶かすなどジョークやパロディーの表現が可能になる。
- 他のブランドや企業とのコラボもしやすく、相乗効果を狙える。
- 1日限りのイベントなので、リアルタイムでの参加が必須で、欧米では4/1のフェイクトピックはAM中が有効とされている。
- ブラックジョークも、「人を傷つけるような嘘をついてはいけない」「嘘をつき返してはいけない」という大原則を遵守する。
今年は、マクドナルドの「マックの内弁当」、常連のパイン飴などが話題になりましたし、IHIの「社員のドレスコードを“創業当時”のものとする発表」は企業の歴史を訴求する上でも内容も上手だな、と感じました。
「エイプリールフール」のオワコン化
「エイプリル・フール」をネタにした投稿は、ステークホルダーとのコミュニケーションを取りやすく、自社に親しみをもってもらえるきっかけになります。その結果、メディアがトレンドして取り上げやすいものとしても広まりました。
ただ、どこもかしこも手を付けることで当たり前になり、内容も陳腐化し、予測可能なジョークやつまらないプロモーションによって消費者の疲れや飽きが生じた結果、最近では「オワコン化」の様相を呈しているとも言われます。
実際に、今年のテレビでエイプリールフールの企業の取り組みを紹介したテレビは、1番組のみでした(CX『ノンストップ!』)。
また、広まることで「適切なユーモアのセンスやタイミングを理解し、消費者の感情や価値観を尊重する」という当たり前のことができていない情報発信も増え、それによってイメージが低下し、信頼性の高いブランドやメディアからは見放される、というサイクルに陥ることもあります。
実際に、弊社のクライアントでも無断でネタに使われた事例が発生し、対応に苦慮しました。
もちろん、創造性や適切なセンスを持った企業やブランドは、依然としてエイプリールフールを有効なマーケティングの機会と捉え、新しいアイデアやアプローチを取り入れています。
マーケティングなどの手法は、これはいわゆる「流行り廃れ」の原則と同じなので想像されやすい流れですが、オンラインのプラットフォームで流布した情報や仕組みは、このサイクルが異様に早い傾向にあります。
エイプリールフールが企業の大喜利化したのはSNSの拡充に時期を合わせてのことなので、この流行り廃れサイクルは短くなるのは必然と言えます。
その結果、弊社でも、日ごろからXが中の人と企業の線引きが出来ていて、世論と同じくらいのフォロワーを持つナショナルクライアントでないとお勧めしません。
常に時代にアップデートするのがマーケティング
これだけ、短い期間でマーケティングのトレンドは変わります。
マーケティング自体が、「顧客のニーズ」と「市況」を結びつける、“今”を意識した考え方ですが、
その手法も常にアップデートしなければ、本来のブランド力自体も落とす事態になりかねません。
顧客と自社との関係値以上に、社会の「空気」を読んで動いていきましょう。